教室紹介

どんな学問か?

疫学(Epidemiology)は、健康・疾病に関する事象を集団の中で計量的に捉え、これらの原因や影響因子とその強さを評価し、最終的には予防手段につなげる実践の学問です。疫学は、古くは感染症の疫学から始まり、がん・循環器疾患などの生活習慣病の疫学にその研究テーマが移ってきましたが、昨今では感染症に関する問題も再びクローズアップされ始めています。また、我が国における各種医療データベースシステムの基盤整備も急速に進みつつあり、データベースを利用した様々な疫学研究、薬剤疫学研究、臨床における判断の根拠を与える臨床疫学研究も今後ますます重要になってきます。
一方、生物統計学(Biostatistics)とは、基礎・臨床・疫学といった医学研究において、どうデータをとるか(研究計画・実験計画)、どう解析するか(統計解析)の方法論を提供する応用統計学です。新薬あるいはより優れた治療法を開発するために行われる臨床試験においては、生物統計家の参加が必須ですが、わが国は極端に少ないのが現況です。
本研究室(学部では、疫学・生物統計学教室を担当)は、昭和40年の保健学科(疫学教室)設置以来、我が国最初の「生物統計学」を冠した講座であり(平成4年の保健学科から健康科学・看護学科への学科改組にともない教室名を変更)、国内における生物統計学関連研究室の教員・研究者を数多く輩出しています。School of Public Healthの教育の基盤が疫学と生物統計学にあることは世界の共通認識であり、学部の段階からも基礎教育を行うことは、医学系研究科・医学部に強い「足腰」を与えるものと思います。

何を行っているのか?

教育面では疫学・生物統計学の教育を学部・大学院学生に対して行うとともに、これらの分野の研究を、東大・本研究室の出身者が教員となっている他大学、あるいは海外の生物統計学・疫学研究者との共同研究も含めて行っています。

研究上のミッションは、「新しい統計解析手法の開発」と様々な分野の医学研究への生物統計家としての参画を通した「共同研究支援」です。前者の方法論の開発に関しては、実際の臨床・疫学研究から生じた統計的問題解決が目標であり、しばしばありがちな「論文のための研究」とは根本的に異なる研究態度を維持しています。後者の「共同研究支援」に関しては、データあるいは研究の信頼性と妥当性の確保に貢献するものです。生物統計学の本質的な目的は、研究目的の明確化と研究の効率化を通した実際の研究支援であり、決して統計=数学ではありません。研究室関係者が設立したNPO日本臨床研究支援ユニットでは、日本各地で実施されている地域コホート研究をデータ標準化のもとに統合する日本動脈硬化縦断研究(JALS;約12万人を追跡)、乳がん・肝細胞がん・膵がん・糖尿病・CKDなどの大規模臨床研究のデータセンターを担当し、教員・大学院生もこれら実践研究に参加しています。また、本研究室の教員は、東大病院臨床研究支援センターが行っている臨床研究の研究計画・統計解析支援を分担しています。

卒論と進路は?

卒論・修論のテーマは、方法論の理論的研究とフィールドでの実証研究に大きく分かれます。
基礎的な生物統計学とコンピュータ利用技術が必要でありそれぞれ学部教育等を通じて磨かれるが、前者をめざす場合には線型代数の習得も必須です。
進路の半分は大学院(修士・博士)、半分は就職であり、就職先は製薬関連業界が主です。医薬品・医療機器の承認申請審査を行う医薬品医療機器総合機構(PMDA)にも統計担当審査官を送っています。
ほとんどすべての研究・実践活動が他分野の研究者との共同作業で行われるため、専門性と同時にバランス感覚と協調性(会話能力を含む)が非常に必要です。

学部卒業生(他研究室への進学者を含む)・大学院修了生の就職先

2020年度~2022年度:北海道大学、慶應義塾大学、慶應義塾大学、国立精神・神経医療研究センター、花王株式会社、中外製薬株式会社、日本生命保険相互会社、日本セルヴィエ、富士フイルム株式会社、McKinsey & Company Japan、P&Gジャパン合同会社、など

2017年度~2019年度:東京大学、東京大学、岡山大学、国立国際医療研究センター、アステラス製薬株式会社、イーピーエス株式会社、エーザイ株式会社、第一生命保険株式会社、野村證券株式会社、みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社、など

2013年度~2016年度:東京大学、京都府立医科大学、国立国際医療研究センター、医薬品医療機器総合機構、アステラス製薬株式会社、アフラック生命保険株式会社、イーピーエス株式会社、クレコンメディカルアセスメント株式会社、住友商事株式会社、ゼリア新薬工業株式会社、など

教室出身者の主な就業先

大学 東京大学、東京大学医科学研究所、京都大学、神戸大学、自治医科大学、東京女子医科大学、東邦大学、東北大学、藤田保健衛生大学、北海道大学、横浜市立大学
研究所・病院(研究職) 東京大学附属病院、国立がん研究センター、国立国際医療研究センター、国立環境研究所、統計数理研究所、東京都健康長寿医療センター研究所、放射線医学総合研究所、順天堂大学附属病院、がん研有明病院、東京慈恵会医科大学附属病院
企業(製薬、CRO、NPO) アステラス製薬、エーザイ、協和発酵キリン、グラクソスミスクライン、サノフィ、ゼリア新薬工業、第一三共、大鵬薬品工業、田辺三菱製薬、中外製薬、ノバルティスファーマ、ファイザー、メディカル統計、ヤクルト、ロシュ、 ACRONET、EPS、北京CRO、日本臨床研究支援ユニット
官公庁 医薬品医療機器総合機構、総務省、静岡県庁

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